• 長谷部真奈見の1000分の1と共に 第八回

長谷部真奈見の1000分の1と共に 第八回

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生涯学習としての「旅」②

先日の大学入試センター試験で、アニメ「ムーミン」はどの国を舞台にしたものかを問う問題が出され、その賛否について話題になりました。
実際にフィンランドに行ったことのある人や、「ムーミン」やアニメが好きな人にとってはボーナス問題だったかもしれません。

理屈はどうであれ、教科書に載っていないことも試験で出題される、これが日本の社会で受け入れられるようになったらいよいよ学校教育も面白くなってくるなあと思ったりします。
教科書の丸暗記では解けない問題が出るとなると、学校教育や塾の指導のあり方、家庭での子育ても変わってくるはずです。

また、今回のように必ずしも答えが「正解」とは言い切れない場合にも、柔軟に対応できる力や、あらゆるヒントから推理して正解にもっとも近い選択肢を選ぶことができる力こそが、これからの時代を生き抜く力になってくるだろうなと改めて自身の子育てを見直すきっかけにもなりました。

奇しくもフィンランドは、世界的に学力トップクラスの教育大国。
“フィンランド式”と呼ばれるその教育方法は日本でも注目を集めてきました。
フィンランドの学校では、宿題がなく、学校以外の時間も子どもの自主性に任せ、興味のあることをそれぞれが自主的に学んでいくことが重んじられているそうです。

娘が1歳の頃、ダウン症候群の合併症を心臓や肺などに抱えていた中で、私は初めて海外旅行に娘を連れて行くことに自信がなく、躊躇していた時に夫がかけてくれた言葉があります。
「この子は体も弱く、成長も周りが期待しているスピードではないかもしれない。大切な娘だからこそ“守り”ばかりではなく、“攻め”の姿勢で、人生いかに楽しく生きて行くかを真剣に考えよう。」
私は、娘が興味を持ち、夢中になれるようなことを見つけるため少しでも多くの選択肢を作ってあげたい、世の中にある色々なものを見たり、味わったり、感じたりして欲しい、沢山の経験をさせてあげたいと、娘の海外旅行を決断。
結果的にこの初めての海外経験で娘は大きく成長し、表情から性格まで、良い意味で変わるきっかけにもなりました。
以来、我が家では積極的に旅行を計画するようになり、娘を連れてこれまでに世界40都市近くを訪れました。

昔、歴史の教科書で習ったこと、地理の勉強で機会的に必死に覚えた地名や山脈、川、湖の名前、美術や音楽の時間に暗記した作品、まつわるエピソードなど、今になって旅先で「これだったのか。
なるほど、こういうことだったのか」と、実際に目で見て、ようやく点と点とが繋がって理解できることが沢山あることに気付かされます。

娘は、日常で見つけた小さな虹や、美しく輝くものを見ると「“オーロラ”みたいだね!」と言います。
4年前、フィンランドとロシアの国境で、マイナス25度という寒さと眠さに堪えてやっと夜空に見ることができた光のカーテンを今も忘れてはいないのでしょう。

ゆっくり成長していく娘には、何歳になっても学び続けることができるのだということをこれからも伝え続けて行きたいと思っています。

(文 長谷部 真奈見)

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長谷部 真奈見プロフィール

1978年生まれ。広島大学附属福山中・高等学校在籍中に、米オレゴン州Eagle Point High Schoolに留学。
慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、JPモルガン・チェース入社、投資銀行業務に携わるも、本社のあるNYにて研修中に9.11世界同時多発テロ事件に遭遇、一転ジャーナリズムの道を目指し福井放送に入社。
報道番組の記者兼キャスターを務め、現在はフリーアナウンサーとして活動中。
(株)Studio7(スタジオナナ)代表取締役。
ヨガインストラクター、ファイナンシャルプランナー、コメンテーターなど多方面で活躍する傍ら、NPO法人の理事としてボランティア活動や、障がいのある子育てについても積極的に発信を続けている。
著書「絵本ヨガ 森のくるるん」(そうえん社)